いわゆるひとつのPHS賛歌

既にドコモから案内が出ているように、NTTドコモPHSサービスが2008年1月7日をもって終了となります。

1995年にアステルNTTパーソナルDDIポケットといった3キャリアが華々しくサービスを開始したPHSですがその後の道は険しく、ユーザからは常に携帯電話との比較にさらされてきました。
サービス開始直後から「移動体で使えない」「エリアが狭い」といった問題点を指摘され、早い段階で「安かろう=悪かろう」というイメージが一般に定着したのは、PHSにとって不幸だったと思っています。

携帯電話も含めて、移動体電話のユーザが国内で爆発的に拡大したのはこの10年程度のことです。
携帯電話が、自動車電話などのアナログ時代からインフラの整備やサービスが行われていたのに対して、PHSはサービスイン直後から加速度的に増加するユーザの要求を満たすべくエリアの拡大と端末の提供を行わなくてはならず、今日まで大変な苦労があったことだと思います。

しかしその苦労が報われること無く、早くも1998年にはNTTパーソナルNTTドコモに事業譲渡してしまいます。
以前どこかで読んだ記事では、NTTパーソナルの最大の敵はドコモだったと元社員の方が語っていました。「PHSは繋がらない」と欠点を執拗に攻撃し、自社の豊富な端末ラインナップをもって顧客を奪っていってしまったという内容でした。
まぁ客観的に見ればPHS事業者の不遇ばかりが書かれているような内容で、公平的に見れば企業の立場上しょうがないという一面もあると思いますが、PHSの立場がどのようなものだったかをうかがい知ることが出来ます。
PHSが携帯電話の手ごわいライバルになる前の早い段階で、このような競争に晒された訳です。

そしてサービスイン10年目の2005年にはアステルがサービス終了。
ついにこのときが来てしまいました。
この年はPHSにとっては非常に苦しい節目となったようで、NTTドコモも新規受付の終了を発表します。
そんな中、KDDIグループで立ち位置が非常に微妙となっていたDDIポケットが、外資系カーライルグループの傘下に入り事実上KDDIグループから抜け出し、名をウィルコムと改めます。
そしてその後、音声定額のヒットや京ぽんW-ZERO3シリーズなどその後携帯電話にも影響を与えたラインナップの投入が話題になり、何とか息をつないでいます。

そんな中、予告されていた事とは言えかつてのライバルであり同志でもあったNTTドコモPHSがサービスを終了します。

PHSは非常に素晴らしいシステムです。
ただ、大きくなる前に激しい戦場の表舞台に晒されたのが、不幸だったと言えるでしょう。
ビジネスの世界に「たら、れば」を持ち込むのはいかがなものかと思いますが、あえて言わせていただくと、あと5年早くPHSがサービスを開始していれば、恐らく3キャリアのうち2社がサービスを停止するような事態になることも無かったことでしょう。

まだ、携帯電話が一般に普及する前、それどころかインターネットも一般に普及する以前にPHSがデビューすることが出来れば、もう少し長い助走期間を持つことが出来たはずです。

幸い、先日次世代PHSが認可されたというニュースがあり、PHSにも少しは希望が持てるようになったと思います。
そんな明るい未来を夢見つつ、サービスを終了してしまうNTTのPHSにお疲れ様と言いたいと思います。