シンプル回帰論

カメラ、オーディオプレイヤー、テレビ、ラジオ、お財布、GPS…。
いやいや、最近の携帯電話の多機能ぶりには感心させられます。
本来の「電話」としての機能は「おまけ」に感じられるほど。最近は「携帯電話」という呼び方ではなくて「携帯端末」と呼ばれることもあるようです。
「携帯端末」はかつてPDAの呼称だった気がしますが、既にその境界線は薄くなっているのかもしれません。

さて、そんな訳で多機能となった最近の「ケータイ」ですが、そろそろケータイにも「シンプル回帰」が起こってもいいように思います。
家電品をはじめ身の回り様々な製品は、多機能化の後にシンプルな基本機能に特化した製品を出すと言うサイクルを繰り返しています。
携帯電話が普及するようになって10年ほど。この間機能拡張をずっと繰り返してきて、もうこれ以上新機能を詰め込むのはどうかと言うほどに多機能化しました。

そろそろ、使い切れないというユーザ声が大きくなってくるのではないかと思います。
いえ、もう聞こえていますね。
お年寄り向けの「シンプルケータイ」の類は、そんなユーザの声をメーカーが聞き入れて「シンプル回帰」させた端末に他なりませんし、敢えて通話機能を取り払ったイー・モバイルの「EM-ONE」もそうかもしれません。

「でも、あれは特定ユーザ向けのもの。一般向けの製品とは異なる」

多くのユーザや、メーカーは恐らくそう考えているのではないでしょうか?
でも、よく考えてみてください。
今後インセンティブの廃止が確実になると端末の値段が上昇する事になります。
そうなると「何でも入り」の高機能ケータイは簡単に購入できる価格では無くなってしまいます。
もちろん、携帯の各キャリアは「割賦販売」という手法で高機能ケータイを手ごろな値段で販売できるような仕組みを導入したり検討したりしていますが、割賦販売には途中解約時のリスクが伴うため、抵抗感のあるユーザも少なくないです。
また、ユーザの中には高機能ケータイを購入したものの、実は通話とメールと、あとは着メロなど特定のコンテンツサービスさえ使えればOKだったなんて方も多いと聞いています。ならば今は高機能化に固執する時期ではないと言い切れませんか?

そんな今こそ「シンプル回帰」の時なんだと思います。

もっとも、単純に「電話とメールに特化しろ」という訳にはいかないでしょう。
既にメーカーも機能の取捨選択をし始めていて、フル機能ではないケータイが数多く市場に出回っています。
しかし既にケータイに搭載する機能が増えすぎてしまいました。
結局、メーカーはユーザのニーズに合わせて様々なバリエーションで機能を組み合わせた端末を市場に投入せざるを得ないのです。

いわゆる少量多品種生産です。これはメーカーも綿密に需要を予測して販売計画を立てなければならないので厳しい事でしょう。
例えば、機能ではないですが20色のカラーバリエーションを持つケータイを発売するとき、全ての色を5千台づつせいさんしたら、きっと人気色は在庫がなくなり販売したくても出来なくなります。
そして人気色のケータイを出荷したくても倉庫には不人気色の在庫があふれかえってしまい入庫も出来ない事になる訳です。

でも「お財布と着うたフル」入りのケータイと「ワンセグGPSナビ」入りのケータイのどちらが人気が出るのかなんて正確な需要予測が出来るものでしょうか?
それは分かりません。

そんな中で「シンプル回帰」出来るのかと言われてしまいそうですが、僕は出来ると思っています。
いわゆる「プラットフォーム」を提供するのです。

電話、メールなどいわゆる基本機能のみを装備し、あとは拡張していくという手法です。
ハードウェアの拡張が必要なら拡張スロットがあればいいですし、ソフトウェアの拡張は既に各キャリアとも仕組みが用意されています。

「端末を安く提供し、追加機能はユーザに選んで購入してもらう」

実はこの手法、端末を購入したら好きなゲームだけ揃えて入れ替えて使うという携帯ゲーム機のビジネスモデルと同じなんですね。
でもこれが、ユーザにとってもメーカーにとっても最も馴染みやすく幸せな「シンプル回帰」なんじゃないかと思っているわけです。